スクウェア・エニックスを特捜せよ
先日、オンラインストライカーの発売元が公表された。
スクウェア・エニックス
・・・嗚呼、なんて素敵な響きであろう。
任天堂のファミリーコンピュータで育ってきた世代である筆者にとって、スクウェアの看板である「ファイナルファンタジー」とエニックスのドル箱シリーズである「ドラゴンクエスト」の融合を予感せずには居られない合併会社だ。
消費者から見れば素晴らしい合併が実行されたように見えるかもしれないが、その裏では一悶着あったことをご存知だろうか。 株式会社スクウェア・エニックスを一言で言ってしまえば、”今年の4月1日付で発足した日本ゲーム界、二大巨頭の合併会社”になるであろう。
会社名の頭にスクウェアの文字が出ているため、あたかもスクウェアがエニックスを吸収したような印象を受けてしまうが、実際はエニックスがスクウェアを吸収している。
この会社名称決議にはエニックスがスクウェアに対しての譲歩、気遣いがあったと推測出来る。
ではなぜ、”出せば売れる”ファイナルファンタジーを保持するスクウェアが吸収されてしまうような事になってしまったのだろうか?
詳しい財務状況は決算情報しか判らないが、あのフルCG映画「ファイナルファンタジー」での興行失敗が大きな要因と言われている。
巨額の制作費が投入されたこの作品は決して悪く無い出来であったが、登場人物がすべてCGだった為、感情移入しにくい感じがあった。
世に送り出す時期、いわば”時代”が早すぎたのでは無いだろうか。
また、この作品の企画段階でかなりの資金調達を行った事が原因で多額の負債を抱え込み、この事が今回の合併に拍車をかけたと思われる。
そんなスクウェアとはうって変わって創業以来赤字決算をしたことが無いと言うエニックス。
博打経営のスクウェア、堅実派のエニックスといった印象を受ける。
ゲーム業界はもちろんの事、日本経済にも今回の合併は当然の如く影響している。
どちらも東証一部上場企業だが、株式の合併比率はエニックスが1に対してスクウェアが0.85。
この比率が確定する前には、スクウェア筆頭株主である宮本雅史氏が合併比率についての不満発言によって変更される等、スクウェア側の”悪あがき”も垣間見られ、決して順当な合併ではなかった。
また、公開された上層部の人事も双方の出身者をバランス良く配置した様には見えるが、社内では派閥争いが激化していることだろう。
新しい経営方針を社員の末端にまで浸透させるにはまだまだ時間が掛かると思う。
正反対の性格を持って発展し続けてきたスクウェアとエニックス。
合併したばかりの新会社に一抹の不安を覚えるのは筆者だけだろうか。 通常、契約交渉には2〜3ヶ月の時間を要すると言われている。
DINGOから出された契約成立発表が昨年の10月1日だった為、逆算すると遅くとも8月頃には交渉が開始されていたと推測できる。
この時期にスクウェアが活発な活動をしていたとは思えないので、アジアを中心にオンラインゲームの展開が目覚しいエニックスが交渉相手であったのでは無いだろうか。
しかし、最近まで公表出来なかった事を考えるとスクウェアだったのか・・・とも思えてくる。
合併してしまった以上、どうでもいい話ではあるが。 オンラインストライカーの製品版販売はこのスクウェア・エニックスが一手に引き受ける事になる訳だが、今までの企業戦略にもスクウェアとエニックスには違いが見られる。
殆どのソフトを企画、製作、販売と自社一貫で実行し、スピーディなサイクルを持ち味にしてきたスクウェアに対し、CHUNSOFT等のディベロッパーをゆっくり丁寧に育てながらパブリッシャーとして力を発揮してきたエニックス。
単純に考えればディベロッパーであるDINGOとしては、エニックスのノウハウが欲しいところだが、スクウェアはスポーツゲームの製作に関しても豊富な実績を持っている。
スクウェア・エニックスとDINGOがどのような契約内容で合意したかは全く分からないが、エニックスとスクウェアの持つノウハウをDINGOが”おいしい所取り”する事が出来ればオンラインストライカーは確実に”ウケル”商品になるであろう。
様々な販売チャネルを持つスクウェア・エニックス、マーケティングに関する不安は一切無いが、統一性の無い方針でDINGOに悪影響が出ない事と、DINGOが単なる天下り先企業にならない事を祈る。
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